社長の仕事は会社を持続進展する仕組み創り②ビジネスモデル

 前回は損益計算書から5つの利益を説明しました。
この利益は会社の経営活動の結果で、過去のものですが、会社の財務状況やわかります。
3年間の過去のデーターからその会社の傾向が類推できます。

現在があるのは過去の結果です。現在ある経営資産(人、物、金、情報など)を活かして会社を持続進展することです。それには、事業活動を通じて未来の利益を生み出す仕組みを作りが重要となります。

この仕組みを作ることが、今回のビジネスモデルの記事です。

【目次】

1 ビジネスモデルについて
1-1. ビジネスモデルの位置付け
1-2. ビジネスモデルとは
2 価値変換へのプロプロセス
2-1. 価値変換へのプロセス
2-2. 靴屋
2-3. ピザ屋
2-4. 家庭用品量販店
2-5. 銘版プレス会社
2-6. 価値変換のまとめ
3 まとめ

【本文】

1 ビジネスモデルについて

1-1. ビジネスモデルの位置付け

ビジネスモデルだけが単独に存在するものではありません。
ビジネスモデルを作るためには、その前提が必要となります。それは、会社の経営理念、行動規範です。これらの関係を図1に示します。

経営理念は、会社の将来に向けた目標です。どのような方向に向かって会社を持っていくかです。
これに基づいて、ビジョン、ミッション、コミットメントなどがあります。これは、必ず必要なものではありません。
ビジョンは会社の未来の姿、在り方です。ミッションは会社の使命です。これらは、特別に明示しなくても、経営理念から読み取れます。特別の事業をするときに行うこともあります。
コミットメントは、何かについて、社長が会社の内外に表示するものです。これは、個別に行われます。

行動規範は、組織活動の基本原則です。その会社に見合う企業倫理、法令遵守などを明示します。

ビジネスモデルは、経営理念と行動規範を上位概念として作られます。これを無視し、活動しますと不祥事が生じる恐れがあります。

1-2. ビジネスモデルとは

ビジネスモデルとは、会社が将来の利益を生み出す仕組みのことです。この概念は図2のとおりとなります。

ビジネスは、利益を生む活動です。利益を生むには、会社が持っている製品・サービスを、顧客に提供して対価を受け取ることなのです。このことは、図2で上部中央にある価値変換なのです。この価値変換を継続的に行うことが会社にとって存続する要件となります。

価値変換は、利益(=売上-コスト)を生む行為であるからです。

価値変換は、顧客に満足を与えることです。満足には、2つのものがあります。
その一つは、顧客が困っている現在の課題や欲求を解決するものです。例えば、お腹が空いたので、かつ丼を食べたいとする顧客に、かつ丼を提供することです。
二つ目は、将来に起こり得る課題に備えるものです。例えば、家が火事で燃えたら、ローンを払い続けなければならないし、新たな家を建てると二重ローンを抱える。予防のために火災保険を提供することです。

製品・サービスを提供する会社としては、価値ある製品・サービスを作り、それを顧客に知らしめ、顧客が認知し、製品・サービスの価値と換金する一連の業務を行います。これが図1の組織活動です。
組織は、管理、製造、営業の3つの機能があります。商業であれば、製造の代わりに商品の仕入れとなります。
その活動を行うには、人、物(設備・店舗・事務所など)、金、情報などの経営資源が必要です。
この中で、人は、会社の組織の一員として担当する仕事を請け負うことになります。会社としては、受け身よりも、自発的に行動できる組織・人の連携が基本となります。

ビジネスモデルは、価値変換が行えるように図解したものです。図解することで、概念的に分かりすくなり、欠落している事項を見つけて補うこともあります。必要により、該当する部分を虫眼鏡で見るように拡大して、詳細を別掲することもできます。

ビジネスモデルはモデルですから考え方です。これをブレイクダウンし、するべき仕事、その仕事の流れをまとめますとわかりやすくなります。これを受けて、事業計画を立てて、その実現に向けて活動することになるのわけです。

2 価値変換へのプロプロセス

2-1. 価値変換へのプロセス

図1の価値変換へのプロセスをもう少し説明します。

顧客は、製品やサービスを買うのではなく、製品やサービスが持っている満足(ベネフィット)が欲しいのです。価値を満足に変換することが会社にとって、重要な仕事です。

価値変換へのプロセスは、図3のとおりです。

価値変換はいきなりできるものではありません。価値変換するには、必ず原因や理由があり、図3の「課題」です。

この課題を解決するための「着眼点」を見つけます。「着眼点」を実現することが「製品・サービス」の価値となります。これが顧客の「満足」と合致するように「価値変換」する行為を行います。

価値変換は、理論に裏付けられたものよりも、「感情」で動かされます。これが重要なのです。この価値変換へのプロセスは、物語のようにするといいです。4つの事例で示します。

なお、ビジネスモデルは社内の体質改善などにも活用できます。社内の顧客とは、何かの課題を抱えている項目、部門や人です。
例えば、コストを下げる課題については、仕事・設備・資材を見直して効率を上げる、水道・電気・ガスなどの省エネにする、人の能力向上などがあります。これについても、ビジネスモデルが応用できます。

2-2. 靴屋

駅前の商店街に靴屋があります。この靴屋(仮にA店とします)は50年以上もお店を開いています。
同じ商店街の同じ並びに、紳士靴、婦人靴の専門店2つができました。この2つのお店は、A店に比べて、大きさも広く、靴の品揃えも豊富で、見栄えのいいおしゃれな靴もたくさんあります。
そのうち、A店の売上が徐々に減ってきています。お客を新たな靴屋に取られたのです。

Aさんは、新しい靴屋と違う靴を置いたらと、差別化を考えてみました。
店の前を通る人を観察してみると、中高年の女性の割合が多く、Aさんのお店にも新しい靴屋にも置いてない靴を履いている人がいることに気が付きました。昔のようにハイヒールを履いてさっそうと歩いているのと違って、履きやすく安定感のある履物なのです。普段靴です。
問屋から売れ筋情報を踏まえて普段靴を仕入れました。歩いている人からもわかるように店頭に普段靴を並べたのです。売れ行きが良くなったとのことです。普段靴でもはやりはあるので、回転もいいようです。

その上、靴を買ってくれたご婦人がご主人を連れて来て、紳士靴を買ってくらたこともあるそうです。

2-3. ピザ屋

新規にピザ屋(B店)を開店するに当たり、お店で食べるのと宅配をするのとがありますが、宅配をすることにしたのです。

他の宅配ピザ屋と違いをアピールしたいと考え、ユニークなコピーの検討から始めることにしました。
その裏付けとなり情報が必要です。お客のニーズあるピザの調理、宅配手段、商圏範囲を把握することです。

ニーズのあるピザとは、お客が自宅で食べるピザの条件です。ピザが冷たいと温めなければなりません。温めるのにレンジなどの器具が要ります。直ぐに食べれません。又、普通の温かさでは、お客に魅力はありません。そこで、アツアツのピザにすると、届いてから少しの間を置いてもアツイ状態で食べられ、喜ばれます。

配送用の箱は、ピザの安定と保温ができることです。

宅配手段は、配達中の安定と商圏の拡大のための運搬具です。自転車やオートバイは乗り終わったら、直ぐに手を離すと倒れます。そのため、立てるためのスタンドが付いています。スタンドを立てるには一手間かかります。その上、保温配送箱を荷台に載せれば、スタンドを立てるのが大変です。スタンドを使わずに安定させるためには、三輪車か四輪車です。小回りが効くのは三輪車です。排気ガスを出さないためには、電動スクーターとなります。

アツアツのピザが冷えない範囲が商圏となります。注文を受けてから、ピザを調理し、宅配完了するまでの時間を最大何分かが商圏となるのです。注文処理・調理のやり方・宅配の各時間、1時間当たりの注文数・顧客数の検討を要します。

注文を受けてから届けるまでの時間を30分以内としました。この時間を維持管理する仕組みも重要な要素となります。
B店では、コピーを「アツアツのピザを30分でお届けします」としましたが、なんとなくインパクトが弱いコピーです。さらに検討し、「アツアツのピザを30分でお届けします。お届けできなければ料金は頂きません」とすると、訴えかたが強くなります。ユニークなコピーとなりました。このコピーが価値変換となります。

次に、このユニークなコピーで宣伝しても損失が発生せず、最低限の費用で立ち上げられるビジネスモデルの構想を作ります。この構想に基づき、実現に向けての計画を立て、計画を実行して、開店をすることに至るのです。

2-4. 家庭用品量販店

家庭用品量販店では、衣装ケースを見直したいと思っていました。その理由は、衣装ケースから衣装を出したり、仕舞ったりする入れ替え作業の手間が大きく、重労働なのです。家庭での使われ方を見ますと次のような状況です。

・衣装ケースを押入れに積み上げている。
・衣装ケースの中が見えないから、衣装が外からわからない。
・衣装ケースの蓋を開けて衣装を出し入れし、終わったら蓋を閉める。
・衣装ケースを押入れから出したり、仕舞ったりする。
・そのため、衣装ケースをいくつも広げる場所がいる。
・衣装ケースが重たいので、衣装ケースの移動に怪我をすることもある。

このように「衣装ケースの入れ替えが大変」な課題をを「楽にできる」ようにしたいと着目をすればいいのです。
・衣装ケースの中が外から見えるようにする。
・衣装ケースの蓋を止め、引き出しにする。

このような衣装ケースにすれば、楽に衣装の出し入れができるということになります。
年2回の衣装の入れ替えは楽になるでしょう。
価値交換は「衣装入れ替えの時間・労力・腰痛の軽減」となります。

これを、ビジネスモデルに落とし込み、実行計画を立てて「価値交換」の実現に繋げてればいいのです。

2-5. 銘版プレス会社

神社に初詣で行きますと、社務所では今年の干支のお守りを売っています。

銘版プレス会社では、プラスチックの銘版をプレスしています。その中に、十二支をかたどったお守りを作っています。十二支の形をプレスして、それに色を塗り、紐を付けたものを、神社名入りの袋に入れています。複数の神社から注文がありますが、形の違った十二支、色・紐・袋も違います。

この会社では、十二支お守りを作る期間が長く、しかも繁忙となっていました。一時的に人員の募集や場所の確保などもあります。

A神社→B神社→C神社→D神社→E神社→F神社と順次に仕事をしていました。
各神社の仕事が1か月かかるとすれば、6つの神社だと6か月かかります。
この例では、A神社は6か月以上前に注文することになります。正月にはまだまだ期間があります。その後の景気変動等で数量の変更ができません。A神社としては余剰として多くの在庫が残ります。注文が早い神社ほど不利です。

この課題を解決するためには複数の外部に委託することです。これの例を、自社と2社の外部委託にしたとします。
自社  A神社→B神社
イ社  C神社→D神社
ロ社  E神社→F神社
としますと、2ヶ月で済むことになります。

そのためには、近場で協力してくれる委託先の開拓と委託時期の調整、必要な資材の供給、仕事の仕方の教育、品質検証、連絡業務などが新たに発生します。しかも、コストを増やさないで行うことです。

この事例は、自社の課題と神社の課題を同時に解決するものです。

実際には、かなりの年月を要しました。理由は、委託会社がプレス、作業場所、人員などの条件が揃っているかどうかです。すべての作業が出来なければ、その作業ができる他の社を探すことになります。

神社からすれば、何もしなくて「注文時期を遅らせ、余剰在庫の軽減」になる価値変換が得られるので、この会社に注文せざるを得なくなります。

2-6. 価値変換のまとめ

以上の4つの価値変換の例を見てきました。これらを、価値変換プロセスとしてまとめたものが、次の表となります。

この表からは、会社が課題を解決するために着眼点、製品、顧客の組み合わせで、「価値変換」に繋げていきます。

3 まとめ

ここで提示したビジネスモデルの概念は、課題解決に応用できます。

あなたが現在行っているビジネスについて「価値変換」につながるようにビジネスモデルをまとめてみたらいかがでしょうかね。
現在のビジネスモデルは、作成した時に比べて環境や社会の状況変化に順応しているか、確認することも新たな発見ができるかもしれません。