
中小企業は大企業に比べて、ヒト、モノ、カネ、情報などが圧倒的に少ないです。
中小企業の根拠となる中小企業基本法では、中小企業に関する定義を明示し、中小企業施策を総合的に推進することになっています。
これを受け、法令等で中小企業の負担を軽減する特例を講じています。例えば、税の軽減、手続きの簡易化などの恩恵が中小企業にあります。
その中で今回は、中小企業における社長の仕事とは一体何なのかを見ていきましょう。
【目次】
1 中小企業の社長の立場
1-1. 経営と資本の分離
1-2. 個人保証
2 社長としての仕事とは
2-1. 最高意思決定者
2-2. 経営活動の基軸
2-3. 持続進展する仕組み
2-4. 事業推進する仕組み
2-5. リスクの事前予防
2-6. 重大な課題対応
3 まとめ
【本文】
1 中小企業の社長の立場
中小企業における社長の仕事は一体何なのかの本題に入る前に、中小企業と大企業とでは、社長の立場があります。それから始めます。
その違いは、大きく分けて2つあります。
□ 中小企業では、経営と資本の分離がされていない。
□ 中小企業の社長には、融資に個人保証がある。
1-1. 経営と資本の分離
会社法では、資本と経営が分離した形態になっています。しかし、中小企業においては、社長は、保身のため株式の3分の2以上を占める資本家であり、経営のトップに君臨しています。
会社の規模が小さいほど、この傾向が非常に強いです。一人株主なら、社長は100%株式を保有する資本家であり、唯一の経営者ということになります。
1-2. 個人保証
個人保証は、金融機関が中小企業へ融資をするとき社長に個人の自宅などの不動産を担保にすることです。社長が、会社が借りた金を返せなくなると、自宅を取り上げるというものです。大企業では、会社が借りる金に関して、社長初め経営者が金融機関に個人保証をしていません。
しかし、金融機関が自主的に「経営者保証に関するガイドライン」を制定し、2014年2月1日からその適用が開始されました。これは、金融機関が、貸付する中小企業者から貸付金がきちんと戻ることを確証できている場合に適用するものです。中小企業にとっては、ビッグニュースです。
でも、これが中小企業にとりましては新たな時間と労力の負担となります。大企業としては至極当たり前のことですがね。
金融機関が中小企業に借入金がきちんと返済できることを要求するものとして、社長との交流以外に次の2つがあります。
□ 定期的な情報提供:決算報告、事業活動報告、事業計画など
(年1回だけでなく、月次決算も要求される場合もあります)
□ 不定期の情報提供:期中における事業活動などの経過報告や事業計画推進状況など
中小企業といえども、やるべきことはきちんとすることが必要となる社会環境になってきたと言えます。
これを踏まえて、中小企業における社長の仕事を見てみましょう。
2 社長としての仕事とは
社長の仕事は、社長にしかできない仕事です。それは、社長としての役割でもあります。
社長の仕事とは、次の6つに要約されます。
□最高意思決定者
□経営活動の基軸
□持続進展する仕組み
□事業推進する仕組み
□リスクの事前予防
□重大な課題対応
これらを順次説明します。
2-1. 最高意思決定者
社長は会社における最高の権限をもつ意思決定者です。同時に義務として責任を負う最高の責任者でもあります。
最高の意思決定者としての仕事は、会社法や定款で定めに基づき取締役会や株主総会を主催し、日常において経営に関する重要な事項を決断する決定者なのです。
社長の仕事は、具体的に、会社や経営の在り方、利益の創り方、事業推進の方法、顧客との取引の仕方、どのような新製品が必要なのか、組織や人材の活力の出し方、資金の調達・用途、重要な課題の対応などの思索的な活動を伴うことが多いです。
社長は、孤独で思索をする時間が多くなります。
2-2. 経営活動の基軸
経営活動の基軸とは、組織や人材が充実して日常活動できるように「ぶれない基軸」であり、これを明示することです。
組織や人材が、日々の仕事において、何かを判断する時にその都度社長に相談しなくても済むようにすることが「ぶれない基軸」なのです。
この「ぶれない基軸」は、会社として将来に向けて想いや目標を実現するために必要なものです。
将来の想いや目標を実現に必要な基軸は経営理念です。これが、会社における憲法のようなものです。これに基づき、事業や対象によるビジョン(将来像)、ミッション(使命)、コミットメント(公約)などがあります。
経営理念は経営指針となるものです。これを実現可能なように行動規範とか行動方針とか呼ばれるもの明示します。これらには、企業倫理、法令遵守、社会的責任などが含まれます。細則として労働協約、職務規程などが別途作られます。
会社の仕事に携わる人が、これらの経営理念等をよりどころに経営活動を行えば、組織や人材が会社の目標に向けて進み、不祥事が起こり難くなります。
2-3. 持続進展する仕組み
持続進展する仕組みとは、会社が価値ある製品やサービスを提供することで得られる利益を創り出す仕組みのことです。
会社は、利益を生み出せなくなったら、世の中に提供する新たな価値あるものを創り出す余力がなくなり、自然に消滅せざるを得なくなります。
持続進展する仕組みは、具体的に事業構想やビジネスモデルとも呼ばれるものです。
これは、事業目標、マーケティング、提供する価値(製品・サービス)、組織(管理・製造・営業)、人材、設備、財務(資金の流れ)などを織り込んだ仕組みとなります。
この膨大な内容を軽減するため、提供する価値(製品・サービス)を中心にする構想とか概念となる傾向にしますと、担当する部門や関連部門は具体的な行動がわかり難くなります。
持続進展する仕組みは、経営活動の基軸をベースに成り立つものです。
2-4. 事業推進する仕組み
事業推進する仕組みとは、事業構想やビジネスモデルを実現するための時系列的に進める仕組みです。
事業推進する仕組みは、事業の年度ごとに立案する経営計画、期中に行われる新製品開発計画、特定な製品の事業計画などがあります。これでは、一年が終わらないと結果がわからないでは日々の経営に役立ちませんので、推進状況を月々に把握するとか、旬や週などに把握することも必要な場合があります。
これは、何を、誰に、月々どのぐらいの数量を、どのように売るのか。受注製品であれば、何を、誰から、月々どのくらいの数量を、どのように受注するのかとなります。これらに関する金額換算し、収支計画を立てます。
この実績を把握し、計画とのずれを修復して行きます。
組織の各部門がPDCAの管理サイクルを回していくことになります。
2-5. リスクの事前予防
リスクとは、人的なものと自然的なものがあります。
リスクの事前予防とは、リスクが起こってもその被害や影響を事前に少なくすることと、リスク発生に伴う対応も含みます。
リスクの事前予防を設定し、訓練している会社は、リスクが発生したら対応や回復処理が速やかです。
特に、東日本大震災で、工場が津波にさわられた会社があります。リスクの事前予防を制定し、訓練をしていたので、津波による死者がなく、半年後に高台に工場移転する計画ができたそうです。
人的なリスクとしては、企業内の企業倫理や法令違反、企業内外による情報漏えい、火災、防犯などがあります。
自然のリスクは、火災、地震、水害、津波などです。
リスクの事前予防は、いつ起こる分からない事象に事前に対応することです。
2-6. 重大な課題対応
重大な課題とは、会社にとって将来の禍根となり、重大な損失や打撃を招くものです。
重大な課題は、いつ起こるか分かりません。
重大な課題の例として、組織の活力がない、計画通りにものごとが進んでいない、品質不良を見過ごしている、クレームの初期対応がうまくいっていない、社会からの信用を失うことなどがあります。
社長は、これらの重大な課題をいち早く察知して、速やかに対応することが必要となります。
悪い情報を社長に一早く届く仕組みを作ることと、悪いことを一早く察知することが必要となります。
ガバナンスが必要です。
3 まとめ
社長の仕事は、現状を将来の目標に向けて架け橋を創ることです。
それは、利益を生む仕組み創りを続けることです。
会社で仕事をする一人一人が自分の人生を実現する喜びと糧を得られるようにするものです。
社長の仕事は、重責ですが、仕事を楽しむ心を持つことがいいようです。